ライディーンだっ!!!!!!
映画が始まり冒頭10分もたたない内に、私は我を忘れて口走った。
もしあなたが子供時代、ロボットや怪獣に歓声を送ったことがあるのなら。
四の五の言わずに、とにかく観ろ!
私が我を忘れたのは、冒頭のイェーガーの出撃シーンでのことだ。
頭部(コックピット)がイェーガーと合体するところで『マジンガーZ』が。イェーガーが基地から出撃するとき岩肌(実際は鉄の扉だけど)が割れて出てくるところで『ライディーン』が(冷静に比較すると全然違うんだけど)、頭のなかでフラッシュバックした。
あの時、あなたと私がドリフトしていたら、幼いころの私が暗記していた『ライディーン』最終回のセリフを全部聞かされる羽目になっただろう(私の持てる暗記力のすべては『ライディーン』に使い果されたと信じている)。
二時間余の間、私の心は小学生だった。
幼いころから大学に上がるころまで続いた私のアニメ生活のほとんどは、男子向けアニメが中心だった。
リアルタイムで観たのはもちろんだが、東京に住んでいた小学生のころは、夕方にアニメの再放送枠があったので(『マジンガーZ』や『勇者ライディーン』などはこの再放送で観た)、そのおかげで5~6年くらい上の世代が観ていたアニメも大抵はみてきた。70年代・80年代の私は、戦うアニメにまみれた生活だったのだ。
そんな私がアニメを観なくなったのは、単純に、キャラクターの絵柄に幼さを強く感じるようになったから。昔は実年齢より大人っぽかく描かれてた気がするんだが・・・・・・。
だから『パシフィック・リム』を観ていてものすごく安心できたのは、登場人物が明らかに大人だというところだ。
思わず20年ぶりぐらいに映画のノベライズを買ってしまったんだが、そこで確認すると一番若いマコだって二十歳は過ぎている計算になる。主人公のローリーは三十近い大人だし、彼がイェーガーに乗り始めた年齢だって、二十歳ぐらいだろう。
その一方で、イェーガーのパイロットはキメのポーズをしっかりやるし、パイロットがやるということはイェーガーのシステム上、当然ロボットもキメてくれるし、必殺技の時は叫んでくれるし(英語では「ロケット・エルボー」だった技が、日本語吹替版では「ロケット・パンチ」に変わっていた。最高だ!)、怪獣は肉感的で瞳が生きてて動きが思いっきり特撮調だし、飛ぶ怪獣は出ないのかなーと思っていたら飛ぶし、さすがに剣は出ないよなーと思っていたら出てくるし。ああたまらない。
そしてそのすべてを、デル・トロ監督は本気で作っている。
デル・トロ監督は、『ブレイド2』や『ヘル・ボーイ』の時に漠然と感じてはいたのだが、オタク愛と大人の成熟が両方備わっている理想的な監督だ。われわれ観客の子供心を刺激しつつ、ちゃんと大人扱いしているのだ。
私の本質はオタクだ。アクションや怪獣やメカが大好きだ。しかもデータ派ではなく本気で感情移入する性質のオタクだ。
でも、もう大人だから大人のキャラクターにしか共感できなくなってるし、作品の向こうに作り手が透けて見える程度には目も肥えた。小学生のころは高校生のひびき洸に恋したけれど、いまはアラフォーだからひと回り下のローリーぐらいが限界だ。製作費はなくとも「こんなの作ったんだ!ぜひ観てくれ!」と作り手の声が聞こえるような作品には感動するが、金欲しさに観客に媚びた映画は鼻につく。
だから、この感情移入が大得意な私でも、2時間どっぷり虚構の世界につかり、現実を完全に忘れられる映画は、最近ぐっと減ってしまった。
『パシフィック・リム』は、そんな数少ない映画なのだ。
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鑑賞一回目は、2D字幕版。これでも十分我を忘れて盛り上がったが、何せスクリーンが小さく迫力には欠けた。
ということで、2回目はIMAXシアターでの3D吹替版で鑑賞。3Dにこだわったんじゃなくて、とにかくいい映像といい音(私は機械音が好きなのだ)で聞きたかったからだが、これが大当たりだった。
3Dのおかげで重量感や大きさにもより迫力が加わったし、装甲や怪獣の皮膚などの細部まできれいに見えて感激だ。音に至っては手に持ったコーヒーのカップがビリビリ震えるほどの振動まできて、五感の内もうあと足りないのは嗅覚だけ、といった状態だった。
ああ、最高!
それに吹替ではクレジットもいらないような超有名声優がメインのキャラクターを演じているので、幸せだった。あえて言うなら、ロン・パールマンの声は谷口節氏が亡くなったから諦めるとして、ローリー役の杉田智和氏はヒーロー声ですごくカッコ良いいんだけど、あれだけベテラン陣を集めたんだし、いっそ井上和彦氏あたりをもってきてたら、私の理性は完全に吹き飛んだだろうに。(なぜそんなに理性を吹きばそうとするんだ、私は)
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さあ、いいかい?もう一度だけ言うよ?
四の五の言わずに、とにかく観ろ!
↑あああカッコイイ~~~~!!!!